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入院・入所に伴う保証人と身元保証等高齢者サポート事業について

後見業務を行っていると
入院の際、施設入所の際「保証人欄」に署名することを求められることが間々あります。

ここでいう「保証」が民法所定の「保証」の場合
後見人がご本人の保証人になることは、ご本人の財産を管理している立場から好ましくないため
後見人としてはこの欄への署名をお断りしなければならないのですが
そもそも、保証人がいなければ、入院・入所できないのでしょうか?

結論から言うと、いずれも、保証人がいないことを理由に入院・入所を断ることはできないものとされています。

入院については、医師法19条の問題として
厚労省から通達(https://www.mhlw.go.jp/content/000516183.pdf)が発出されています。
入所についても、同趣旨の解釈(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000196650.pdf)が厚労省より示されたとのことです。

一方で、現実問題として、入院等の際に保証人が求められる実態は続いています。
この点についても、厚労省においていかなる場面で保証人等が求められているかに関する調査が行われており
大別すると、① 緊急の連絡先に関すること、② 入院計画書に関すること、③ 入院中に必要な物品の準備に関すること、④ 入院費等にすること、⑤ 退院支援に関すること、⑥ (死亡時の)遺体・遺品の引き取り・葬儀等に関すること
といった場面で保証人等が求められると分析されています。

この内、やはり気になるのは⑥に関することとなります。
この点については、遺言の作成や各自治体で配布されているエンディングノートに記すことで
生前の意思を最大限反映させた葬儀を執り行いうるのではないかと考えられるところです。

なお、近時、「身元保証等高齢者サポート事業」と称されるサービスが提供されるようになっています。
こちらについては、消費者保護の観点から
総務省において研究結果(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_230807000167327.html)が公表されています。
また、一部の事業者に対しては、消費者保護の観点から契約無効・預託金の返金等を求める訴訟も散見されます。

このサービスに限らず、法令が未整備、監督官庁が不在の間は
契約自由の名の下に不平等な契約が締結される事例が一定程度存在するのが実情です。
独身の高齢者の方は、どうしても先々のことが不安となりますが
事業者の比較を密に行い、ご負担が過度にならないサービスを利用するのが肝要となります。

 
2023年11月30日 22:53

超高齢化社会を支える制度~後見制度~

日本は世界でも類を見ない超高齢化社会を迎えていますが、
このような社会情勢を支える大きな柱となるものとして成年後見制度が挙げられます。

以下の文章は、後見制度を利用するか悩まれているご高齢の方向けの説明資料として作成したものです。

・民法という法律(契約ごとのルールに関するきまり)では、「どのような契約を誰と結ぶのかは自由」となっています。
・このルールは、「正常な判断能力を持っている人同士であれば自由に契約をした方が良い」という考えが元になっています。
・しかし、高齢等で判断能力が不安になっている人の場合、このルールが悪用されることがあります。
例)家に布団があるのに、更に布団を10組買うことになっている
  シロアリ駆除のために、床下に10台扇風機が置かれている
・また、老人ホームに入ること、お医者さんにかかること、銀行からお金をおろすことも契約ですが、判断能力が不安だと、契約ができないことがあります。
・そこで、裁判所に対して、ご本人のために難しい契約ごとの判断をしてくれる人を選んで下さい、と頼む仕組みがあり、この仕組みのことを「成年後見制度」と言います。

成年後見制度は更に「後見」・「保佐」・「補助」という3つのタイプに分かれています。

3者の違いは、ご本人の判断能力と後見人・保佐人・補助人の権限にあります。

○後見
判断能力:事理を弁識する能力を欠く常況にある 
権限:法定代理人としてほぼ全般(「日用品の購入その他日常生活に関する行為」についてはご本人が単独で可能)

○保佐
判断能力:事理を弁識する能力が著しく不十分である者
権限:民法所定の重要な行為(例:元本の領収、借財・保証、不動産の売買等)について同意見・取消権
   一定の行為(例:銀行取引、入院・入所契約等)について代理権を設定することも可能

○補助
判断能力:事理を弁識する能力が不十分である者
権限:保佐人が取消権を持つ行為の内の一部について同意見・取消権
   保佐人と同様に代理権を設定することも可能

判断能力については
認知症の方であれば長谷川式テストの点数
知的障害の方であれば知能検査の結果等はおおよその目安となりますが
厳密に判断するためには裁判所が選定した鑑定人による鑑定を経て裁判所が決定することになります。

後見人等が選任されるとご本人に代わって様々な行為を代理することが可能となりますので
独居の方、ご家族が遠方にいる方等で周囲の方からのサポートだけでは万全とならない場合には
極めて重要な支えとなります。

一方、現在の法律では、判断能力が十分でなくなった後にしか利用することができず
「万が一があったときの予めの備え」とはなりません。

このような「予めの備え」に対応するものの1つとして
任意後見制度があります。
こちらについては別稿で紹介することと致します。

 
 
 
 
2023年05月31日 20:26

終活に「家族信託」という選択肢


 「終活」。ここ数年来,世間でもよく耳にする言葉ですが,実際に何をどのようにしておけばよいのかという相談を受けることが多いです。
 
自分に万が一のことがあった場合,
自宅をどうするか…
預金を誰に渡すか…
とにかくあいつだけにはビタ一文も渡したくないのだけど…
 
このようなご相談について,弁護士100人いたら100人が必ず“遺言を遺す”という方法がありますとまず答えるでしょう。
ただし,ご相談にいらっしゃった方もそのくらいは知っておりますので,結局は遺言の種類や作成方法を教えてもらって相談が終了することになります。
 
ですが,それでは相談者の希望を100%は叶えられないケースもあります。
例えば,自宅と預金をお持ちの80歳のAさんが以下のような相談をしてきた場合はどうでしょう。
「最近認知症が進み始めたと感じており,自宅や預金の管理が心配になってきた。自分が死んだあとは妻(75歳)が生活するために自宅や預金を譲りたいが,その妻が死んだあとは長男の子である私の孫(24歳)に自宅と残った預金を譲りたい。長男と次男の嫁さんたちとは気が合わず,できれば長男と次男には相続させたくないと考えている」
 
遺言を遺すという方法を用いた場合,妻へ全て相続させることは可能ですが,その妻が亡くなったら次に孫へ相続させるというところまではカバーできません。
このような場合,「家族信託」という選択肢があることをご存じでしょうか。
「家族信託」であれば,まずは妻へ,その次に孫へ相続を順次指定することが可能になります。
つまり,今後認知症になって遺言が作成できなくとも,自分が死んだあと,まずは妻に自宅と預金を相続してもらい,その妻が亡くなった後は孫に自宅と預金を譲りたいという希望を叶えることが可能になります。
ただし,「家族信託」を選択する場合,基本的には,誰か信頼できる者に自分の財産を託さなければなりません(例外として自己信託も可能ですが一旦置いておきます)。
読んで字のごとく,家族を信じて託すということです。
Aさんの場合,最終的に自宅と預金を相続することになる孫が受託者となって財産を管理することが考えられます。
ただし,「家族信託」を選択する場合,しっかりとした信託設計を行う必要があり,また税金面での検討も必要になりますので,遺言と異なり専門的な知見なくしてご自身で作成することは正直無理です。
 
もしも,終活において,「家族信託」という選択肢のことをもう少し詳しく知りたいという方がいらっしゃれば,お気軽にご相談ください。
なお,かながわパブリック法律事務所では,定期的に遺言・相続に関するご相談を無料で実施しております。その場合,もちろん「家族信託」に関するご相談も無料です。
 
2022年10月30日 21:09

あなたが遺言執行者に指定されたら…

みなさんも「遺言」というのはなんとなくでもご存じかとは思いますが,「遺言執行者」というものはご存じでしょうか。

自分に万が一のことがあった場合,自分の遺産を誰にどう遺すかを書いた文書がいわゆる「遺言」になりますが,遺された預金や株式,不動産を受け取ることになった者が実際にこれらを取得するためには,銀行や法務局等の関係各所に様々な手続きを行う必要があります。
これらの手続きを相続人全員の協力なしに単独で行える者が,「遺言執行者」です。
「遺言執行者」として指定された者がいれば,遺贈を受けた者や相続人のために,その者が遺言に従って遺産を分けるに必要な手続きを単独で行う権限を有していますので,他の相続人を関与させることなく速やかに手続きを行うことが可能になります。
例えば,「遺言」があったとしても,手続き関係書類に相続人全員の署名や捺印を求められる金融機関もあります。その場合,非協力的な相続人や連絡が取れない相続人がいる場合,手続きが進まないことがあります。このような場合,遺言執行者を指定しておけば,遺言執行者が単独で速やかに手続きを行い,相続を完了させることが可能になります。
 
あなたがもし「遺言執行者」に指定された場合,一体何をどうすればよいのでしょうか。
なお,「遺言執行者」の指定は,遺言を遺す者が勝手に指定することができますので,当然のことながら指定された人はこれを拒否することも可能です。
「遺言執行者」の指定を承認してもよいと考えた場合,最低限行うべきことは以下の事項になります。
 
①相続人全員の調査
ex.被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍の収集
 相続人全員の所在調査 等
②相続人全員に対して,「遺言」の写しとともに,その「遺言」で自分が「遺言執行者」に指定され,これを承認したことの通知連絡を行う
③遺産の調査
ex.預金であればどこの銀行の預金口座に残高がいくらあるのか等
④遺産の目録の作成
⑤遺産の目録を相続人全員へ送付
⑥遺産の分配に必要な手続き
ex.預金は解約・払い戻し手続きを行って取得する者へ金員を渡す
  不動産は法務局で所有権移転登記手続きを行う 等
 
これは何か大変そうだなぁという話にはなります。
なお,追い打ちをかけるつもりはありませんが,上記の事項を怠った場合,相続人から責任追及を受けることもありますので,なおさら気が重い話にもなります。
 
ある日突然,もしもあなたが「遺言執行者」に指定されていることがわかった場合,簡単に引き受けて進めるべきかどうかは一考を要したほうがよいかもしれません。
 
かながわパブリック法律事務所では,弁護士へ遺言執行者の代理業務を完全にお任せいただくことが可能であることはもちろんのこと,相続人や相続財産の調査,必要な書類の作成のサポートといった部分的な事項だけのお手伝い可能です。
もし,「遺言執行者」に指定されてお悩みの場合は,お気軽にご相談ください。
 
2022年09月30日 21:02
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