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2023年の記事:ブログページ

入院・入所に伴う保証人と身元保証等高齢者サポート事業について

後見業務を行っていると
入院の際、施設入所の際「保証人欄」に署名することを求められることが間々あります。

ここでいう「保証」が民法所定の「保証」の場合
後見人がご本人の保証人になることは、ご本人の財産を管理している立場から好ましくないため
後見人としてはこの欄への署名をお断りしなければならないのですが
そもそも、保証人がいなければ、入院・入所できないのでしょうか?

結論から言うと、いずれも、保証人がいないことを理由に入院・入所を断ることはできないものとされています。

入院については、医師法19条の問題として
厚労省から通達(https://www.mhlw.go.jp/content/000516183.pdf)が発出されています。
入所についても、同趣旨の解釈(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000196650.pdf)が厚労省より示されたとのことです。

一方で、現実問題として、入院等の際に保証人が求められる実態は続いています。
この点についても、厚労省においていかなる場面で保証人等が求められているかに関する調査が行われており
大別すると、① 緊急の連絡先に関すること、② 入院計画書に関すること、③ 入院中に必要な物品の準備に関すること、④ 入院費等にすること、⑤ 退院支援に関すること、⑥ (死亡時の)遺体・遺品の引き取り・葬儀等に関すること
といった場面で保証人等が求められると分析されています。

この内、やはり気になるのは⑥に関することとなります。
この点については、遺言の作成や各自治体で配布されているエンディングノートに記すことで
生前の意思を最大限反映させた葬儀を執り行いうるのではないかと考えられるところです。

なお、近時、「身元保証等高齢者サポート事業」と称されるサービスが提供されるようになっています。
こちらについては、消費者保護の観点から
総務省において研究結果(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_230807000167327.html)が公表されています。
また、一部の事業者に対しては、消費者保護の観点から契約無効・預託金の返金等を求める訴訟も散見されます。

このサービスに限らず、法令が未整備、監督官庁が不在の間は
契約自由の名の下に不平等な契約が締結される事例が一定程度存在するのが実情です。
独身の高齢者の方は、どうしても先々のことが不安となりますが
事業者の比較を密に行い、ご負担が過度にならないサービスを利用するのが肝要となります。

 
2023年11月30日 22:53

相続登記の義務化と休眠抵当の対応

令和6年4月1日より相続登記が義務化されます。
詳細は、例えば以下のページをご参照下さい。

相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)   ~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局 (moj.go.jp)

従来、不動産登記法上は、建物の新築や地積・地目の変更等の不動産の表示に関する部分については
登記義務が課されていました。
一方、権利の所在に関する登記には、このような規定がありませんでした。

登記手続をするには、費用(登録免許税、司法書士費用等)も手間(印鑑証明書の取寄等)もかかります。
また、民法の建前は、「不動産の権利の得喪については、登記がなければ第三者に対抗することができない」
ということなので、
逆に言えば、およそ第三者が登場しなさそうな土地(田舎の山林等が典型です)等
登記をしなくても実害がない場合には、登記がなされないことが多くありました。
しかし、その結果、明治初頭から所有者が一切変更されていないような土地が多数出現するようになり
仮に、当該土地を有効利用したくても、一体誰に交渉すれば良いのか分からないような事態が起こるようになりました。

これを避けるために今般の法改正がなされたということです。

一方、当事務所の所員の多くが関わっているひまわり公設事務所が設置されている地域においては
長期間放置されている抵当権(休眠抵当)が記録されたままの登記も散見されました。
こちらも明治初頭の100年以上前の抵当権がそのままという事例もありました。

この場合、不動産登記法第70条の規定に基づき
共同して登記の抹消をすべき者の所在が知れない場合には
被担保債権の弁済期から20年以上経過した後に
被担保債権、利息、遅延損害金を供託して抹消する方法が存在します。
ここで「所在が知れない」というためには
登記簿上の住所・氏名から、転居先や相続関係が把握できないことを示す必要があります。
この点、戦前は、住所と本籍地が区別されていなかったようであり
住所=本籍地となっている例が多いようです。
そのため、登記簿上の住所の記載どおりに本籍地を書いて戸籍取寄せを試み
これができた場合には、相続人を確定することができます。
相続人が確定できた場合には、登記の手続に協力する旨の依頼をすることもできますが
相続人が多数、遠方に所在している人が多い場合には
抵当権抹消手続訴訟を提起することもあります。

所有権に関する登記も抵当権に関する登記も
古い記録がそのままであることにメリットはありませんので
このような登記を見つけられた場合には、お早めに手続に着手されて下さい。
 
2023年09月30日 22:45

超高齢化社会を支える制度~後見制度~

日本は世界でも類を見ない超高齢化社会を迎えていますが、
このような社会情勢を支える大きな柱となるものとして成年後見制度が挙げられます。

以下の文章は、後見制度を利用するか悩まれているご高齢の方向けの説明資料として作成したものです。

・民法という法律(契約ごとのルールに関するきまり)では、「どのような契約を誰と結ぶのかは自由」となっています。
・このルールは、「正常な判断能力を持っている人同士であれば自由に契約をした方が良い」という考えが元になっています。
・しかし、高齢等で判断能力が不安になっている人の場合、このルールが悪用されることがあります。
例)家に布団があるのに、更に布団を10組買うことになっている
  シロアリ駆除のために、床下に10台扇風機が置かれている
・また、老人ホームに入ること、お医者さんにかかること、銀行からお金をおろすことも契約ですが、判断能力が不安だと、契約ができないことがあります。
・そこで、裁判所に対して、ご本人のために難しい契約ごとの判断をしてくれる人を選んで下さい、と頼む仕組みがあり、この仕組みのことを「成年後見制度」と言います。

成年後見制度は更に「後見」・「保佐」・「補助」という3つのタイプに分かれています。

3者の違いは、ご本人の判断能力と後見人・保佐人・補助人の権限にあります。

○後見
判断能力:事理を弁識する能力を欠く常況にある 
権限:法定代理人としてほぼ全般(「日用品の購入その他日常生活に関する行為」についてはご本人が単独で可能)

○保佐
判断能力:事理を弁識する能力が著しく不十分である者
権限:民法所定の重要な行為(例:元本の領収、借財・保証、不動産の売買等)について同意見・取消権
   一定の行為(例:銀行取引、入院・入所契約等)について代理権を設定することも可能

○補助
判断能力:事理を弁識する能力が不十分である者
権限:保佐人が取消権を持つ行為の内の一部について同意見・取消権
   保佐人と同様に代理権を設定することも可能

判断能力については
認知症の方であれば長谷川式テストの点数
知的障害の方であれば知能検査の結果等はおおよその目安となりますが
厳密に判断するためには裁判所が選定した鑑定人による鑑定を経て裁判所が決定することになります。

後見人等が選任されるとご本人に代わって様々な行為を代理することが可能となりますので
独居の方、ご家族が遠方にいる方等で周囲の方からのサポートだけでは万全とならない場合には
極めて重要な支えとなります。

一方、現在の法律では、判断能力が十分でなくなった後にしか利用することができず
「万が一があったときの予めの備え」とはなりません。

このような「予めの備え」に対応するものの1つとして
任意後見制度があります。
こちらについては別稿で紹介することと致します。

 
 
 
 
2023年05月31日 20:26

離婚関係 2:離婚の方法によるメリット・デメリット

前回記事で書きましたとおり、離婚の方法は、大きく分けると協議離婚裁判手続による離婚に区別されます。

この2つの方法によるメリット・デメリットは
コインの裏表のような関係にあります。

裁判手続による離婚は
基本的には調停→(例外的に審判)→訴訟の順に進みます。
調停手続が開始されるためには、裁判所に調停申立書を提出する必要があります。
その後、裁判所で必要な点検をした上で
申立人側に第1回の調停期日をいつにしましょうか?という打診がきます。

離婚調停は、近時も事件数が減少していないようであり
それに加えて、コロナ禍以降は、調停に使える部屋が減少しているとのことです。
そのため、第1回期日として打診されるのが
申立書を提出してから1月半後、といったことも珍しくありません。

その後、調停期日が何回か開かれますが
期日と期日の間隔も1月半、場合によっては2月以上先ということが増えています
(コロナ禍以前は、概ね1月に1回のペースでしたので、
簡単に言えば、以前より倍位時間が掛かることになります)

この点、協議離婚については
未成年のお子さんがいる場合の親権者指定、面会交流の頻度・方法、養育費の額
慰謝料・財産分与等の金銭的なやり取りの有無・その額
等が検討すべきテーマとなりますが
これらのテーマについてお互いに納得していれば
最短で次の日にでも離婚できることになります
(金銭的な部分について万が一支払われなかった時に備えて公正証書を作る場合は
公証役場とのスケジュール調整が必要ですので、もう少し時間が掛かります)

一方、上述のテーマについて
夫側・妻側の意見が対立していると、これを交渉で詰めていくのは難しいところです。
特に、離婚については、単純な金銭請求事件(貸金返還・交通事故等)に比べて
「足して2で割る」といった割り切りが難しい部分が多いです。
更に、交渉については、〆切がありませんので
のれんに腕押し、のらりくらりとかわすタイプの人や
「気持ちの整理がつなかいので落ち着いて考えたい」という人を相手にすると
なかなか思うように話し合いが進まないことになります。

この点、裁判手続の場合は、裁判所が日程を決めてくれますので
一種のペースメーカーの役割を果たしてくれることになります。
また、調停を2回、3回開いて開きが大きい場合には
訴訟を提起することになりますが、
訴訟については、裁判所はいずれ必ず判決を出さなければならないため
多少時間は掛かったとしても、「相手方の都合でいつまで経っても何も決まらない」ということは
避けられることになります。

更に、意見の対立が大きくなりがちな親権者指定や面会交流の方法等のテーマについては
裁判手続の場合には、裁判所が間に入ってくれることになりますので
夫側・妻側だけで話し合いをするよりかは
少しずつではありますが歩み寄りの機運が高まることが期待できます。

以上をまとめますと

夫婦の間での意見の隔たりが小さい、話し合いの方向性が一致している場合→協議離婚
意見の隔たりが大きい、DV等で一対一で話し合うのが困難な場合→裁判手続による離婚

といった区分けになろうかと思います。

「離婚を考えているけれどもどういった形で進めていけば良いか分からない」
といった点が気になる場合には、是非、当事務所までご相談下さい。
 
2023年03月31日 21:10
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